以前、産経新聞のiRONNAの米山知事のコラムを取り上げて「あーだこーだそーだ」(byウルフルズ)と書かせて頂きました。このiRONNAですが、WEBページを見てみると大きな枠組みのタイトルはさらに攻撃的でした。
その名も「「バカ量産」の教育無償化は必要か」とさらに攻撃的です。iRONNAの主張はタイトルから察するに「大学にバカで入れなかった学生がタダになると大学に入るからバカが量産される」という理屈だと思います。
この仮定って本当にそうなんでしょうか?
学費という問題
今や大学全入時代だよ。大学全入時代の意味って誰でも入れる時代ってことですよね? つまり学力が理由で大学に入れなかったケースって多数派なのかという疑問が生まれます。
学力以外の要素としてまず考えられるのが議論されている「学費」という要素です。
こちらをご覧いただくとわかりますが「進学率の低い高校では、進路変更の要因が圧倒的に「学費など」となり」とあります。今でも奨学金があるじゃないか、というご指摘もあるかと思いますが奨学金で自己破産が1万人よ。
このニュース聞いた後で、自分がその立場なら奨学金で大学進学するぞ、って思えるのかな。切実な立場の学生さんほど高卒で就職しちゃうでしょ。
両親の影響
個人的に思うのは「両親(もしくは片方)が大卒ではないケース」も多いような気がします。20年前(1997年)の大学進学率は男女平均34.9%、女性は26.0%です。
ご両親が大学進学しなくても人生を切り開けているわけで「子どもにわざわざ大学なんて行かなくていいよ」と日常的に会話していて、そういう環境で育てば大学進学という選択肢を選ばずに就職その他の進路を選択しやすくなるような気がします。
整理すると…
「学力」が理由というのは否定しないけれど「学費」「家庭内の教育」によって大学進学しないケースの方が多いのではないでしょうか。
その片方の「学費」という理由が無償化によって解決されることって良いことなんじゃないの? 所得格差・教育格差の解消に繋がるかも、と思います。
その他の金銭面の課題
とはいえ「学費」が解決されても「金銭面」の課題が解決されるわけではありません。つまり「高等教育(大学)の無償化」によって所得格差などの問題が解決するのかも吟味が必要ということです。
大学が山ほどある東京などの都市は恩恵を受けるでしょう。一方で大学がそれほどない県や一部の学部がない県はどうでしょうか。
また都道府県ごとに収入・家賃に大きな違いがあるのは皆さんもご存知の通り。地方ほど収入が厳しいですよね。
どれだけ成績が良くて東大に入りたくても、ご家庭の収入状況によって学費が免除になっても子どもの家賃と仕送りが払えないかもしれませんよね。じゃあ、地元に平等に大学があるかどうかはあの獣医学部騒動でご存知の通り。本当に難しい問題なんです。
バカな大学は増える問題
さて、話を戻すと「無償化」で「バカな大学生が量産される」とは言えないということです。それは「学費」を理由に進学をしない高校生の中に「賢い生徒」も「バカな生徒」もいて、どちらが多いとは言えないからです。
iRONNAのコラム上で学費を払えない生徒が全員バカだというエビデンスを出してくれることを期待したいですね。
そうなると考えられるのは高等教育無償化が本質的な問題ではなく、以前の繰り返しになりますが18歳人口の減少による経営難の大学が増え、それによって人集めの為に安直に入試を簡単にする大学が現れることなんではないでしょうか。
「バカな学生」が増えることが問題なんではなく、「バカな大学」が増えることが問題。
以前の記事です。よろしければどうぞ。