りょうさかさんと

教育業界にいる陵坂さんが教育・子育て・DWEなどについて書くブログ

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高等教育無償化では解決できない地域格差


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どうも陵坂です。今回は教育無償化のお話。

教育無償化については各政党によってもスタンスが違いますし、またその範囲、方法論、課題もいくつかの視点で既に述べられています。幼児教育と高等教育(大学教育)の無償化によっても幼児教育は良いが、高等教育(無償化)はバカな学生を増やすだけだと米山新潟県知事のように主張される方もいます。

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本来は幼児教育無償化の方法と課題と財源、高等教育無償化の方法と課題と財源といった形で整理して議論する必要があります。が、現状はごちゃごちゃに「教育無償化」という言葉で一括りにされているように感じますり

以前も似たようなことを書きましたが改めて「高等教育無償化」について書こうと思います。

結論を先に書くと「高等教育無償化は賛成だけど、今の案では無償化しても格差は解決しない」というもの。

教育は「投資」

そもそも教育は投資です。字面では理解していてもこのことを肌感覚で理解している人ってどのくらいいるのでしょうか。勝間和代さんが某所で「日本人は「投資」の感覚は希薄だけれど「貯金」と「投機」は大好き」という主旨のことを言っていました。

教育に関しても同じような感覚ではないでしょうか。

教育というのは知識をため込むことではないし、一発逆転で大学合格を目指して「ハイ終わり」というものでもありません。

そして、これは個人としても、保護者としても、国としても同様です。 

高等教育無償の投資効果

だいたい日本では1年に100万人の子どもが生まれています。センター試験受験者数は50万人なので、浪人生がいるとしてもおおよそ半分の高校生が毎年センター試験を受験し、大学受験に望んでいます。

つまり、半分の高校生は大学進学ではない別の道を進んでいます。大卒の方が給与の高い職に就ける可能性が高いことはご存知の通り。大卒生が増えれば、国としてGDPが増えそうな気がします。でも陵坂が気にしているのはもっと別のこと。それはAIの進歩のことです。 

高等教育には「教養」を求めたい

AIの進歩で仕事を奪われると想像するのはコンビニやスーパーの店員と思いがちですが、すでにゴールドマンサックスではトレーダーがその職を奪われています。

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日本国内の銀行もその流れで人員削減計画も発表されました。トレーダーなんて間違いなく大卒の賢い方のお仕事だったはず。それすらAIに奪われる時代です。

じゃあ、大学なんて行っても意味がないってことを言いたいのではなく、逆にそういう時代だからこそ大学における教育に期待したいと思っています。

大学において「モラトリアム」を謳歌するのも違うし、「就職予備校」的な教育を求めることも長い目で見た時にAIに勝てる人材を作れるような気がしません。陵坂は案外「教養」が重要になるんじゃないかなって思っています。

AIに人が勝てる要素は想像性。その創造性の源泉って「教養」なんじゃないかなと。まあ、これはエビデンスを確認していないのであくまで私見です。 

高等教育無償化を大学の延命措置にしない

就職や一般生活における大学の価値は「大学名(偏差値)」ですよね。

「新入社員の彼、慶応大学卒業だって!」みたいな会話があると思うんですが、そこで重視されるのはどこの大学を卒業したかであって、何を学んだかではありません。

これは「入学歴社会」を象徴しているだけです。取りあえず「大卒」という肩書を求める行為も同様です。

でも、世の中の大学にはとても多くの「Fランク」(定義は諸説)と呼ばれる極端なことを言えばお金を支払ってと名前を書けば合格できる大学もありますよね。

もちろん社会における「大学の価値」は「偏差値」だけではなく、「研究成果」など多岐に渡るのですが、大学生の教育という観点を軽んじることは出来ません。

仮に「Fランク」であっても卒業する時にしっかりと学生を鍛え上げていれば良いと思います。Fランクでそれが出来ない大学は、少子化なんだし淘汰されて潰れてしまえばいいんです。

学生を鍛え上げる簡単な方法は「簡単に卒業させない」というもの。しっかり水準を超えた成績の学生にだけ単位上げればいいじゃん。ただ大学の自治といって国がどうこう運営には口を出せないのが構造上のひずみだと思います。 

なぜ高等教育無償化じゃ格差が埋まらないのか

高等教育無償化に反対の方の意見で「バカ大学に行くバカ学生に税金を使うのは無駄だ」というものがあります。しかし、実際には「お金」の面で進学を断念する学力のある高校生もいるはず。そういう高校生にとって無償化は解決策になるでしょうか。

結論から書くと「地域によっては解決するが、多くの地域では解決しない」というもの。

もっと具体的に書くと東京近郊、愛知近郊、関西近郊においてのみ解決します。

これは以前の記事でも触れましたが大学の分布に偏りがあるからです。地方によってはあまり偏差値の高くない大学がほとんどという地域があります。 

本当かよって疑う方はこちらの記事で確認してください。

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そういう地域に住んでいる高校生は進学の際に、優秀な大学の多い東京か愛知か関西に出て行って下宿せざるを得ません。

お金がなくて子どもに進学を断念させていた保護者が、一人暮らしの費用を4年間も出せますか? って話です。

(しかも東京なら家賃も物価も高いというダメ押し)

じゃあ、一人暮らししないで通える範囲の大学行けよって思う方もいると思います。

でも、そういう学生がFランクに行くことで格差を埋めることができるの? それが税金の投資として本当にリターンがあると思うの?

学力はあるけれど経済的に断念していた学生にとって本当の意味での解決となり、本当の意味での投資になるのか。陵坂は、高等教育無償化だけでは解決しないと思います。

ほな、さいなら。

こちらの記事も参考にどうぞ。

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