りょうさかさんと

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反転授業で教員がいらない?


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どうもりょうさかさんです。

今回は「反転授業」(反転学習)について述べたいと思います。この言葉をご存知の方はどの程度いるのでしょうか? 

日本では主に中高一貫や高校の一部で導入され始めたこの授業形態。どういう特徴があってどういうメリットがあるのかまとめていきたいと思います。

反転授業とは

通常の授業の形態は教員が教科書・教材を基に指導し、その宿題を家庭でしますよね。反転学習とはそれを入れ替えて「反転」させたものなんです。

凄くシンプルに言えば、家庭で「動画授業」を受け、学校の授業中に「宿題」をするという形式のことを「反転授業」と言います。

実際の反転授業では学校で宿題(問題演習)をするだけではありません。動画授業によって得た知識を基に授業では知識の確認やそれを前提とした議論や思考活動を行うのが主なスタイルです。

よく海外の大学の講義スタイルがこの反転授業だと言われます。

教員はいらない?

ただ学校の授業で宿題をしていたら教員の方はいるの? という話になりますよね。実際私が学校関係者の方に、反転授業の話やスタディサプリのような動画授業の話を情報提供すると現場の先生からは「私たちっていらなくなるよね」という愚痴や嫌味を言われます。

反転授業が一般的になった時、ただ授業で問題演習だけをさせるような教員は確かにいらなくなるかもしれません。普及した場合は教員の授業における関わり方が変化するだけだと思います。一方的に教える授業から共に考えたり、考えを引き出す授業法が求められるようになるわけです。

そんな教員の力量も試される反転授業のメリット・デメリットはなんでしょうか。

メリット

・個々の生徒の理解度を把握しやすい。

動画授業を見たかどうか。何分見たのか。また動画授業内の演習をどの程度正答できたかなど教員はデータベースとして把握するようなシステムを組みます。このシステムは必須と同時に生徒を把握するメリットにもなります。 

・出来る生徒・苦手な生徒にとって有効な指導法

学校内の一斉指導ではどうしても理解の遅い生徒にペースを合わせる必要があります。しかし、反転授業では授業自体は知識前提の議論や思考活動、発展問題の演習などになりますから出来る生徒にとっても無駄な時間はありません。

一方で、苦手な生徒にとっては動画授業なので何度でも見ることができます。どうしてもわからなかったところを授業で教員の先生や同級生から教えてもらうことが出来るので、わからないことを置き去りにするケースが減ります。同級生からの教え合いは、教える側の生徒にとっても理解が深まるといったメリットがあります。 

デメリット

・費用面の問題が生じる。

動画授業はないとお話しにならない授業スタイルなので、まず動画授業についての費用が発生します。また有料の動画授業を使うにしろ、教員自作の動画授業を使うにしろPC・タブレット・スマホといった機材と通信料が必要です。

教員自作の場合は先生方の負担が一時的に増えることになります。一度作ってしまえば、次の年に使いまわせるので最初の導入1年目がめっちゃ大変です。 

解決策としては先日報道のあった「都立高校での個人スマホの活用」のように生徒のものを利用してしまうことが1つです。あとは有料になりますがスタディサプリのような動画授業サービスを活用してしまうことも一つです。 

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学校が導入しなくても生徒だけで出来る時代

有料ですが既に動画授業のサービスはあるわけです。例えば有名なのはリクルートさんのスタディサプリですよね。 

例えば、高校生の方だったら友人と一緒にスタディサプリの動画授業を見る。その後に問題集の関連する問題や入試の過去問を解いてみる。出来た生徒は、悩んでいる生徒にヒントを出したり、答えの出し方を教えてあげたり。数学なら問題によっては解き方が複数パターンある場合もあるわけで、どのパターンが一番良いか話し合ってみる。

自分たちだけで解決したら素晴らしいし、結論が出なかったりわからなかったら学校の先生に皆で相談しに行って「僕たちこう考えたんですけど、先生はどう思いますか?」と尋ねれば良い。これって立派な反転学習でより内容理解が深まるんですよね。

実施例

最後に実施例をご紹介。まだまだ国内ではこれから。少しずつですが取り組みや研究が始まっています。

佐賀県武雄市では公立小学校において取り組みがなされています。

武雄式反転授業である「スマイル学習」とは、(S=school、M=movies、I=innovate、L=live、E=education classroom)を略したもので、「先生(学校)の動画によって、教室がより革新する授業(学校と家庭がシームレスにつながる学習)」を意味している。

(引用)武雄市 「ICTを活用した教育」 2014年度第二次検証報告書要約版 2015年9月 

近畿大学附属高等学校では英語と数学を導入されています。

英語の授業では,予習を強化し授業における訳や文法の解説を削減することで,より多くの時間を英語を定着させる活動に割くことを目的に反転授業を導入している。この授業では,まず導入として語彙の習得や音読活動などを行った後,生徒が自宅で教師が制作した解説ビデオと教材を使い,語彙の習得や音読活動を行う。学習管理システム上に作られた確認テストも受講する。授業では,語彙の復習とテスト,英文理解の確認を行ったうえで,生徒が数人のグループを組んで協同学習を行う。協同学習では,互いの自己紹介を英語で行い互いにワークシートに書き取るなど,学んだ知識を使う活動を行う。

(引用)「反転授業 ICTによる教育改革の進展(重田 勝介)」

大学関係では北海道大学の「情報学Ⅰ」愛媛大学理学部において実践がされています。

(参考)反転授業の実施方法と事例集 愛媛大学理学部反転授業ワーキンググループ 平成29 年3 月

興味のある方はこれから資料を読んでみてくださいね。

教員ではなく、保護者の方、学生の方はこんな授業形態もあって効果的だけど大変なのね。それをやってくれる学校・大学はとっても熱心なんだな、という理解で良いと思います。

ほな、さいなら〜